「これがここで…こうして…。」
「……………………。」
視界はほとんど真っ暗で何も見えず、カチャカチャと機械をいじっている音が頭上で聞こえる。
事の発端は数分前にさかのぼる。
「ここをこうするのはどうかな。」
遊星とブルーノはプログラミングをしているようで、さっきからよくわからないワードが二人の間を飛び交っている。
私は邪魔にならないようにと、離れた壁際に椅子をもってきて腰掛け、二人の様子を眺める。
「やってみよう。」
自分達の世界に入っている彼らは周りに気づかない。
見事なブラインドタッチでキーボードを素早くうっていく。
こうして二人のプログラミングを遠くから眺める(見守る?)のが暇な時の楽しみだったりする。
何回聞いても、話してる内容とかは、全然 理解できないのだけど。
カタカタカタカタ…
キーボードをうつ音だけが部屋に流れ、目を閉じてその音に耳を傾ける…。
ふいに、電気が切れ、部屋が暗くなった。
上の階でジャックが何か言っているのが聞こえた気がした。
………お湯を沸かそうとしてブレーカーがとんだか何かか。 なんてベタな。
幸い、作業していたコンピューターは無事だった。
電池が入っているため、充電された分が切れるまでは電源がもつのだ。
「僕が直してくるよ。 遊星は作業を続けてて。」
「ああ、頼む。」
電池モード(?)に入ったコンピューターのディスプレイは普段より暗く、その薄明るい光だけがこの部屋に唯一ある光だ。
きっと上の階は真っ暗だろう。
「ええーっと…ここだね。 ん? 誰かいるの?」
目の前にブルーノの影が来た。
「私です。 あ…どこうか?」
部屋の上の方は気にしたことがなかったが(というか身長のおかげで視界に入らない)、
もしかして自分の頭上にあるのか。
「か。 いや、大丈夫だよ。 暗いから、どこかにぶつかると危ないしね。」
そう言って、ブルーノは上に手を伸ばし、ブレーカーの戸を開け、作業を始めた。
そして冒頭に戻る。
近い。 近い近い近い。
ブルーノの腹あたりが目の前にある。
少しでも前に出ればぶつかりそうだ。 壁に後頭部をくっつけているからこれ以上 下がれないのに。
すごくドキドキしているのがわかる。
遊星やジャックやクロウとは幼い頃からの付き合いだが、ブルーノはここに来てまだ間もない。
こんなに近くに慣れない男の人が来たのは初めてで、だんだんクラクラしてきた。
しかもブルーノ、いい匂いがする。
作業している本人はこの状況に気づいてないのか。
「あとは、これをこうすればっ…よし。」
電気が戻り、部屋が明るくなる。
たった1分程度のことだったはずなのに、とても長く感じられた。
「ありがとう、ブル……………。」
遊星がブルーノにお礼を言いかけ、途切れたのが聞こえた。
「ごめんね、大丈夫だった?」
「い、いいよいいよ…。」
ブルーノが私に何か聞いているような。 まともな返答になっていない気がする。
彼は背がとても高いうえに私は椅子に座っているので、私と目線を合わせるために かがむ。
「、いいにおいがするね。 徹夜の疲れがなくなったみたいだよ。」
んな大袈裟な、なんて冷静なツッコミもできるはずもなく。
ふわっとした笑顔で何をすらっと言っているのかこの人は。
ただでさえ今 私の中では大変な状態なのに。
「……? 大丈夫?」
極め付けには、何も答えなくなった私を心配して、顔を覗き込んできた。
だから、顔が、近いんだって。
これが漫画だったら「ぼふんっ」という効果音がついただろう。
私は一気に放心状態に突入した。
「すまん、皆! 大丈夫だったか!?」
暗闇の原因を作った本人、ジャックが階段を駆け下りてきたらしい。
「あ、うん、大丈夫だよ。」
答えたブルーノを見れば当然、私もジャックの視界に入る訳で。
「っ貴様ァ!! に何をした!!」
「え? 僕何もやってな うわぁぁあ暴力反対っ!」
(ジャック? …のヤツ、どうしたんだ、遊星。)
(たぶん…カクカクシカジカ。)
(あー…そりゃジャックが黙ってねえな。 天然も苦労するなあ……。)
(……おい、、大丈夫か。)
(………………………………。)
―――――――― いいにおいだね。 なんだか安心できる。
・・ 後書き ・
ブルーノが好きすぎて勢いで書いてしまいまし、た^▽^……orz
天然無自覚ブルーノかわいいと思います。
↓ヒロインの設定やら何やらまだ確立してないので、ひとまずこの短編だけの設定 補足。
・遊星達とは幼少の頃からの知り合い。
・ジャックの妹的存在…らしい。
・ヒロインはこの時点でブルーノに特に感情はもってません。 ブルーノも同じく。
ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました!
2010 / 6 / 25 案 ・ 2010 / 8 / 30 UP