ロラン・・・貴方がこの世界からいなくなってもうどの位経つだろう・・・。


貴方がいなくなって私の世界はとても変わった。


大好きだった・・・貴方が。


この世界で一番、誰よりも。


貴方が死んで、私はどれだけ泪を流したか。


でも、貴方は帰ってこない・・・・・。





「LAST LOVE」






ウォーゲームが終ってメルヘヴンも平和を取り戻しつつあった。


はチェスの兵隊の一人だった為、どこにも行く場所など無かった。


それに、はとても大人しい性格だからあまりチェスの中でも友人や、親しい関係の人は居なかった為、誰かの家に行くという事も許されなかった。


でも、には一人だけとても親しい人が居た。


その人の名前は、「ロラン」。


チェスのナイトクラスでとても優しい性格だった。


ロランは私を愛する人だといってとても大切にしてくれた。


そんなロランが、も大好きだった。


ずっと一緒に居れる・・・そう思った矢先だった。


ロランはクラヴィーアに行ったまま帰ってこなかった。


噂によるとロランは自害したそうだった。


「・・・ロラン・・・。」


(何で・・・何で・・・私を置いて先に行っちゃったの・・・。)


は小さな町の木の陰に隠れ、一人泣いていた。


「ずっと一緒に居てくれるって、言ってたのに・・・。」


そろそろも限界だった。


お腹も空いていたし、精神的にも疲れていた。


「・・・このまま、貴方の所に行きたい・・・。」


辺りはもう闇に包まれていた。


唯一の光は月の光だけだった。


は月をぼんやりと見つめた。


そしてはっと気が付いたように立ち上がった。


「そうだ・・・もし本当に死ねるんだったら、ロランと初めて会った・・・あの場所で・・・死にたい。」


はふらつきながら暗い夜道を歩いていった。





が向かったそこは、月が空の真ん中に見え、満天の星空が見える丘だった。


丘には竜胆の花(りんどうのはな)が月光に照らされて白く神秘的に光っていた。


は竜胆の花を踏まない様に気を付けて座り込んだ。


「ロラン、貴方に初めて会ったのも・・・こんな夜だったね。」


は懐かしむ様に瞳を閉じた・・・。


(そう、あれは第二次メルヘヴン対戦が始まる少し前の事・・・)



は第二次メルヘヴン大戦が始まる少し前、この場所から見える景色が好きで、よくここに来ていた。


そんな、ある夜だった。


がいつもの様に竜胆の花に囲まれて月を眺めていると、後ろからとても落ち着いた声がした。


「貴女も、ここが好きなんですか?」


いきなり声をかけられ、ビックリとしたは恐る恐る後ろを向いてみた。


そこには長い髪を風になびかせ、天使のように綺麗な人が立っていた。


「あ・・・ご、ごめんなさい・・・。ビックリさせちゃいましたか?」


その人はそう言いながら愛らしく笑って見せた。


「・・・・・誰・・・?」


は少し怖がるような様子を見せた後、何かに気が付いたように目を見開かせた。


「・・・!!ナイトの・・・ロランさん・・?」


その人はもう一度愛らしく笑って見せた。


「そうです。よく分かりましたね、さん。」


「え・・・・?」


は一瞬不思議に思った。


はその時、ルーククラスだった。


ナイトクラスの人が、たかがルークの名前を覚えている筈無い、そう思ったからだ。


「どうして、私の名前を?」


ロランはの隣に座りながらその質問に答えた。


「どうしてって・・・どうしてでしょうね・・。何でか分からないんですけど、貴方の名前だけは知ってるんです。」


「・・・そうですか・・・。」


さんも、この場所が好きなんですか?」


ロランは今だ不思議がるの顔を覗き込見ながら言った。


「え・・・。あ、はい・・。」


ナイトの人となど今まで話した事の無いは少しためらいがちに話した。


そんなを見て、ロランはまた愛らしく笑った。


「僕と話すのに、そんなに緊張しないでください・・・。」


「あっ・・・はい・・・。」


「それにしても、ここから見える景色はとても綺麗ですよね。僕もここが大好きなんです。だけど、最近忙しくて全然来られなかったんです。それで、やっと忙しく無くなって久し振りに来たんです。そしたら、貴方がここに居ました。」


ロランはの顔を見ながら言った。


「私、ルークだからやる事無くて殆んど毎日ここに来てるんです。」


「じゃあ、またここで会いましょう。僕も、暇を見つけたらここに来るんで。」


「え・・・いいんですか?」


ロランはにっこり笑って見せた。


「はい。」


それからはロランと度々この丘で会うようになった。


そしていつの日からか、二人は相手の事を恋人と呼べる存在になっていた。


はいつでもロランの事を考えるようになった。


ウォーゲームが始まってから最終決戦まで、ロランの事をこれほどまでに心配したのはだけだったろう。


さん、ずっとずっと、一緒に居ましょうね。僕はさんが大好きです。」


そんな事を、毎日の様にロランは言っていた。


ロランがクラヴィーアに行く前の日もあの丘で・・・。


「ずっと一緒ですよ、。」


そう言うと、ロランはに抱きついた。


ロランのさらさらの髪がの頬を撫でる。


「うん。」


は小さく答えた。


「・・・実はですね、。僕、明日から少し出かけてきます。」


「え・・・。それって、どういう意味?」


「ファントムと一緒に、クラヴィーアって所に行って来ます。」


「ファントムと・・・。じゃあ、また戦いに行くのね。」


は悲しそうな顔をした。


「・・・。大丈夫ですよ!僕は必ず帰ってきます。約束しましょう。」


その言葉を聞いたとたん、は泣き出した。


・・・。」


「・・・必ず・・・必ず帰って来てね・・うっ・・絶対、絶対だからね・・・。」


「はい・・。」


ロランは静かに答え、そして愛おしく笑って見せた。


そして、それがの見た最後のロランの姿だった。


もう、貴方は居ない。


この世に居ない。






「ずっと、一緒ですよ・・・。」





「あの言葉は・・・嘘だったの?・・・ロラン・・・。」


とたんにの瞳からは泪がぼろぼろと零れ落ちた。


「ロラン・・・帰ってきてよ・・・。」






「何ですか、。」







冷たい風が、勢いよく吹いた。


竜胆の花弁が、舞っている。


はそっと後ろを向いてみた。


そこには長い髪を風になびかせ、天使の様に綺麗な人が立っていた。


「ロラン・・・。」


「お久し振りです、。」


は一瞬、時が止まったかに思えた。


「・・・どうして泣いてるんですか?貴方に泪は似合いません。」


そう言うとロランはの目に手を近付け、泪をすくった。


「嘘・・・どうして、生きてるの?貴方は死んだんじゃ・・。」


「貴女をおいて、死ぬわけ無いじゃないですか。約束したじゃないですか。ずっと一緒だって。」


「でも・・・。」


「確かに自害、しようと思いましたよ。」


「しようと・・・し・・た・・・?」


はロランの顔を見上げた。


「ええ。アルヴィスさん達から見たら、僕が死んだように見えたでしょうね。・・・それに、僕自身も確かに死のうと思いました。でも、貴女の事を考えたんです。」


「・・・・。」


「貴方と約束した事、貴方と居た日々の事を。そうしたら、僕は死んじゃいけないと思ったんです。」


「・・・だから・・・帰ってきたの?」


「はい。」


ロランはにっこりとに微笑みかけた。


「・・・・。」







パシッ!






ロランの頬をはぶった。


さん・・・。」


ロランはぶたれた頬を手で抑え、ゆっくりとを見た。


「ロランの・・・ロランの・・・バカぁ~~~!!」


はロランに抱きついた。


「死んでないならどうしてもっと早く帰って来てくれなかったの!!どうしてずっと私の事一人にしてたの!?」


「え、え~~っと・・・。あ、あ・・・あの、ご、ごめんなさい・・・その・・色々とありまして・・・。」


は強くロランを抱きしめた。


「・・・すごく、心配したんだよ、ロラン・・・。本当に、毎日泣いてたんだよ・・・。」


「・・・・・ごめんなさい・・・。もう、絶対に貴女を離しません。ずっと一緒です。」


ロランもを強く抱きしめた。


「絶対だよ・・・。」


「はい。」


「絶対に・・・だからね・・・。」


「はい。」


「約束破ったら、今度こそ許さないからね。」


「・・・はい♪」


ロランはまた愛らしく笑って見せた。


もまた笑い返した。









月の光が今宵も竜胆の花を美しく照らしていた。











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 ミドリさんから相互記念に頂きましたロラン夢です。

 素敵な夢&相互、ありがとうございます!!