オイラは……意気地無しじゃないっス!!
「わああーっ!!!」
「やっちまえ、ガルー」
「ちっ…」
木の棒を振り上げ向かってきたジャックを、ガルーは殴り飛ばす。
痛え……
「何のマネだよ、ジャック? まさかとは思うが今………”ぶっとばす”…って言ったか?」
飛ばされた拍子にジャックの手から離れた木の棒は、ガルーによって簡単に折られてしまった。
――――てめーは意気地無しだ!! いつものようにカカシのように突っ立てろ!!
――――自らの胸に誇りをもって戦ったか?
少し弱気になってしまったジャックにルーガルー兄弟の言葉が響いた。
が、次にバッボの言葉が浮かぶ。
そうだ。
ジャックは目を見開き、立ち上がる。 心臓の音がうるさいくらいに鳴る。
くわ を握りしめ、再びガルーに向かって突っ込む。
「だあーっ!!!」
「聞き違いじゃなかったみてえだ。 まぁいい…少し遊んでやんぜ」
”遊ぶ”。 ガルーは今回、爪で くわ に対抗した。
「へへっ…ガルーの奴つきあいいいぜ」
『ルーガ…』
戦いから離れた場所で野菜を食べていたルーガの傍で声が聞こえ、ブン、という音と共に暗闇に淡い光が浮かんだ。
光りが消え、現れたのは、黒い服に三角帽子の長髪の男。
「相変わらずくだらん遊びをしているようだな。 仕事の依頼だ。 内容はARM捜し!!」
「よォ、ペタさんか! またARMかい?」
「今度のはレア物だ。 この近辺に”バッボの封印”と呼ばれる洞窟がある。
そこに眠るARMを何度か、数ある盗賊達に依頼したのだが、帰ってくる者も無く、失敗に終わっていたのだ。」
「それを取りに行けってか? 危ねーなー」
「違う。 先日バッボの封印に新たに差し向けた盗賊から報告が入った。 ”宝箱は空であった”と!」
「へえ。 誰かがとったのか。 スゲエな!」
「あそこにはマメに人を送っていた。
無くなっていたのが確認されたのは昨日!
つまりバッボという謎のARMを手に入れた者はまだ近くにいるはずだ。
その者を見つけ、ARMを奪えとの事だ。 報酬は5000万ピューター!!」
「高いな! のった!! 腹ごなししてから始めっから、情報は待っててくれ!」
ペタという男の話に、初めは興味がなさそうにしていたルーガだったが、報酬の額を聞いてその気になった。
食うかい?、とペタに畑の野菜を1つ放る。
「マズイね」
ペタは一口かじって野菜を足で踏み砕いた。
「ぐっ…」
ガルーとの戦闘を続けていたジャック。 ついに くわ の柄は折られてしまった。
「いっ…てえ…」
ジャックは腹を押さえ、地面に膝をついた。
「おい、ジャック。 なんだかんだ言って、ここの野菜気に入ってんだぜ。
それを作ってるお前は殺せねーよ。 だから…」
てめえのお袋を殺す。
その言葉に、ジャックは目を見開く。 笑顔の母の姿が彼の脳に浮かぶ。
「確か、お前は作物作りのすげえ能力もってんだよな? つまりお前がいればこいつが食える。
逆らった罰は与えなきゃいけねえ! ババアは見せしめだ。」
言葉が終わるか否か。
ジャキン、という音と共に、ジャックが左拳をガルーに向けた。
その手首には、スコップのチャームが着いた鎖の腕輪。 ジャックのARMだ。
「…正気か? 調子に乗るなよクズ!! そいつを発動させたら最後だな! てめえの命も頂く!!」
――――野菜はまた作り直せばいい。
――――ジャックは取り返しがきかない。 私のたった一人の肉親だからね。
あの時の母の言葉を思い出す。
「オイラにとってもそうっスよ!! 母ちゃん!!!」
アクセサリーが光り、銀色のスコップがジャックの手に収まった。
「ウエポンARM! バトルスコップ!!!」
「……………わかったよジャック…………殺す!」
ジャックはスコップで殴り、ガルーの爪をスコップで受ける。
「もっかい言ってやるっス!!! お前らをぶっとばす!!!」
しかし、飛ばされたのはジャックだった。 衝撃に血を吐き、地面に叩きつけられる。
「あのARMは引き取ってくれねえのか?」
ルーガはジャックのスコップを指差しペタに尋ねながら、野菜を1つ手に取る。
「ずいぶんと旧型。 価値ナシだね。 私は他の盗賊団に会いに行くよ」
「へっ! 誰の使いか知らねーが、いつ見ても薄気味悪いヤローだ」
背を向けるペタに嫌味を言い、野菜を口にほおり投げ、噛んだ瞬間。
ガキッ
「!!」
やわらかいはずの野菜が、鉄のようにとても硬かったのだ。
野菜を砕こうとした牙はボロボロと欠ける。
「紳士を口の中に入れるとは……この無礼者めが!!!」
手に取って見ると、その硬い野菜は、色こそ畑の野菜そのものなのだが、何故か顔がついていた。
とても不機嫌になった”野菜”はルーガの腹目がけて体当たりをする。
鈍い音がし、ルーガは倒れる。
「男になったのォ! ジャック!!」
「バッボ……」
しゃべった”硬い野菜”――バッボはジャックに笑いかけた。
思いもよらない登場に、ジャックは目を丸くする。
「ジャジャジャジャーン!!!
狼も二人!! こっちは三人!! 問題ねえよなジャック!! おっ…」
見上げれば、ギンタが屋根の上に仁王立ちで立っていた。
しかし次の瞬間。
「ぬ゛あ―――っ!!」
「ギ…ギンタ?」
足がすべり、彼は大きな音を立てて地面に落ちた。
「はあ…だから上るなって言っただろバカ」
家のドアの横には、が腕を組んで壁によりかかるようにして立っている。
落ちたギンタにあきれた顔をしていたが、ジャックを見て微笑んだ。
「何が三人じゃバカ者!! ワシを入れたら四人!! 数に入れんか無礼者!!!」
「ああ、ごめん、そうだね」
「!」
一人、この場から去ろうとしていたペタは移動用ARMの発動をとく。
怪しく光った視線の先には、バッボとの姿があった。
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・・後書き・
ついに悪サイド出てきました。 ペタです。
でも悪サイドの本番はまだまだですね;; このペースだと気が遠くなりそうorz
こう読み返してみるといろいろ発見するのですが、今初めて気づきました。
ルーガが取った野菜バッボ、ちゃんと鎖が描いてあったことに…!
ジャラジャラ音がしそうで気づきそうなんですが、そこらへんはどうなんでしょう(笑)
今回はヒロインの出番が少なすぎる…!>< でも次回はヒロインのもう1つのARMの出番です^^
2009 / 3 / 24 UP