「いってーっ」
「ギンタ! ! あんたら寝てたんじゃなかったっスか?」
ギンタは後頭部を押さえて立ち上がる。
ジャックは未だに驚いた表情で畑に座っていた。
「夜になる前からとバッボと相談してた! 意気地無しジャックが気合入れるトコ見るぞって!!」
「なんか他に言い方ない?」
ぐっと拳を作って笑顔で言うギンタに、ジャックは青筋を浮かべる。
「それにバッボのその体………」
ジャックがバッボの方を向けば、こっちに向かうバッボが見える。
ぴょいーんぴょいーんと跳ねて、何故だかとても嬉しそうだ。
「おお!! 気づいたか?! かっこいいか? シヴイじゃろ?! かれこれ日が沈む前…」
『………何ィ、ワシの体に色を塗るぅ? バカかお前。
ワシのこのキラキラしたハダにシミでも付いたらどーするのだ! バカ。 バーカ』
その日の昼、畑にて。 頼んだのはギンタと。
いまにも怒鳴らんとばかりの表情で、バッボは頼みを断る。
『わかってねーな、バッボ! バッボ、服着てねーだろ?』
バッボの答えにイラっときたギンタだったが、バッボを自分の目線まで持ち上げ、聞く。
『丸いからな』
『だよな! 丸いと服着れないもんなっ(?)」
『だから絵を描くんだ。 いわゆるオシャレ。 紳士はオシャレにも気を遣うだろ?』
『………』
二人の説得に、バッボは静かになり少し考えた。
その結果が、この野菜そっくりのペイントだったのだ。
「作戦のためとはいえ……本人が気に入ってるなら嬉しいんだけどね」
ニヤ、と笑い、つぶやいたの言葉がジャックに聞えた。
その意味はすぐにわかった。
「どうよ!? 似合う!? 前のワシとどっちがよい!? 自分じゃ何が描いてあるかわからんのでな!!」
「……わからん方がいいと思うっス」
期待した目と大声で聞くバッボ。 ジャックは冷静に答えた。
「大丈夫かルーガ!?」
「ぐぶっ……野菜…野菜がしゃべった!!」
倒れたルーガを心配し、ガルーが彼のもとに駆け寄った。
「オイお前ら!」
バタバタと慌しくしていた二匹はギンタの声で静かになる。
「ジャックに謝れ。 そんで帰って、二度と来んな!」
「…今日はムカつく日だな」
「おお。 久々に殺しモード全開でいくか!」
「てめえの命令なんざ聞くと思うかクソチビ! 嫌だっていったらどうするよ」
二匹はギンタをにらむ。
「「ぶっとばす」」
ギンタはバッボハンマー部分を前に構えた。
「や、やばいっスよ、ギンタ、!! あんたらが勝てる相手じゃない!!」
「手ぇ出してみジャック!」
訳がわからず、言われたままに出したジャックの手に、二人がタッチする。
「タッチ! 選手交替!!」
「かっこよかったよ。 少し休んでいろ」
ジャックに笑顔を向けて、二人は二匹の方を向く。
彼は言葉も出ず、ただ二人の背中を見ているだけだった。
目の前にいるのは凶悪な狼。 危険な場面。 それなのに、ギンタはとてもワクワクしていた。
「いくぞ…バッボ! (夢に見た夢のような世界に……体が反応してる!!)」
「一宿一飯の礼というやつだな! 紳士として当然と言えよう!!」
「楽しそうだな、ギンタ」
口元に笑みを浮かべて、もARMを発動させる。
”13トーテム ロッド”
これもこの世界に来た時から持っていたARMの一つだ。 普段はチェーンの形で、腰につけている。
唱えるようにARMの名前を言うと、アクセサリーが光り、水色がかった銀色のロッドに変わる。
「「バラ肉にして売ってやるぜ―――っ!!」」
二匹の人狼が同時に二人に襲い掛かってくる。
「ギンタ――――っ!!!」
危ない。 ジャックは叫んだ。
だがギンタの投げたバッボがルーガの顔にクリーンヒットする。
「!!! ルーガ!!?」
飛ばされたルーガを気にし、隙ができたガルーに、がロッドで殴る。
「こっ……このガキ――っ!!」
「おっ おっ!」
「くっ!」
(ぎ、ギンタの動きはどこか素人くさいっスが…
オイラは受け止めるだけで精一杯だったルーガルーの攻撃を軽くいなしている?!
強い!!! アンタら何者っスか、ギンタ、?!!)
ギンタはバッボを投げたり、ハンマーで叩いたり。 は隙ができやすいギンタのフォローに回る。
そんな二人を遠くから怪しげな目で見つめるペタ。
す………
彼はゆっくりと手をあげ、人差し指につけている指輪を戦っている二人に向ける。
男に気づいていたは、その動作を不審に思ったが再び戦いに集中した。
「ぐふぁ…はあっ!!」
「(こいつの武器は何だ!? ARMなのか!?)
おいペタぁ!! あんたもARM使いだったよな!? 手伝ってくれ! こいつ、ただのガキじゃねえ!!!」
ペタに助けを求めるルーガ。
だが、ペタは怪しく笑みをうかべたまま。 微動だにしなかった。
「くそっ…意気地無しのジャックだけだったら楽だったのによ―――っ!!」
「おいっ!! ジャックはもう意気地無しじゃねえぞ! 本当の意気地無しはお前らだ!」
叫ぶルーガに、ギンタが講義する。
「ギンタにしては的を射たセリフだな。 弱き者しかたたく事のできぬ臆病者である!!」
「…君たちの負けだ」
「こっ…の…(こんなガキに…オレ達が負ける訳が……っ) 負ける訳がねえだろ―――っ!!!」
するどくとがった爪を構え二人めがけて来たルーガに、バッボを投げつける。
ルーガは飛ばされ、そのまま意識を失った。
「もらったぁ――っ!!」
倒したはずのガルーが背後からギンタに襲い掛かる。
「ギンタ! (間に合え…!)」
とっさにロッドで対応しようとしただったが、その必要はなかった。
シャベルの先が顔に当たり、ガルーはその場で倒れた。
ジャックがやったのだ。
「………やった…。 途中から怖くなかった…足も震えなくなってた…!
ルーガルーを、倒した!! ギンタ!!」
振り向いたジャックに、ギンタとは笑顔を返した。
「ありがとう―――おかげでいろいろなもの守れたっス! 本当にありがとうっス!!」
「いーや。 まだじゃ!!」
戦いは終わった。 だがバッボは何かたりないようだ。
「こやつらにもう悪事が出来ぬようにしなくてはな!!
野菜など食えぬよう牙を全てへし折り! 人を殺せぬよう爪を全て叩き割る!!」
(恐ろしい……)
その光景に顔を青くするジャック。
「見ないほうがいいぞ、ジャック」
「って、そういうはずっと見てるじゃないっスか」
「彼らの最後を見届けようと思ってね」
そう言って微笑む。
恐ろしい人がここにもいた、と思ったジャックであった。
はっ、と思い出したようには振り返る。
あの男。
その時には遅く、黒ずくめの男の姿は闇に消えていった。
(見てるだけで動こうともせず…ずっと怪しい笑みばかりうかべていた。 それにあの動作…あの指輪……まさか、な…。)
「どうした? 。」
「いや、なんでもないよ。」
ギンタの声で考えから戻される。 はギンタを不安にさせまいといつもの笑みで返した。
――――ギンタ…その生意気なブサイクは君にあげよう
――――ただし――――
――――それをもっているといろいろな奴に狙われると思う
――――生きているウェポンARMなんてレア中のレア! みんな欲しがるはずだから
――――気をつけてね
――――気をつけてね……
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・・後書き・
私に何が起こったんだろう。
1日で書き上げました、まさかの2日連続更新。 …明日雪降るかな←
ヒロインは黒いんだか意地悪なんだか。 いや、どちらも同じか? 一応黒い子です。
2009 / 3 / 25 UP