今のドラグーンとトライピオの戦いは互角。
ドラグーンが長い爪で攻撃すればトライピオは巨大なハサミで防ぎ、
トライピオが毒針のついた尾が襲ってこればドラグーンは爪で防ぐ。

『トライピオ、目を覚ませ。 お前は操られているんだ!』

『ケケーッ。 神聖獣界を逃げ出した裏切り者が何を言うか!』

戦いながら話す2匹。

『逃げたんじゃない! オレは”邪悪”を倒す力を求めて、この世界へやってきたんだ!!』

ドラグーンは勢いよく爪でトライピオを攻撃しようとする。

『”邪悪”? あのお方を”邪悪”と言うか!?』

トライピオが尾の針を構えたその時。
雷が落ちた。 ………今度は、の元へ。

、大丈夫?!」

「っ…」

衝撃の拍子に尻餅をついたから何かが転がった。
…それは彼女のベイブレード”ガルオン”。 ”黒獅子”の聖獣だ。
そのベイブレードに、バチバチ、と電気が走っている。

『あのお方は神聖獣界の王となられた!!
 そして体を持たなかったオレをこの世界に送り、戦うための体を与えてくださった。
 …なあ、ガルオン。 遅かったじゃねえか』

「まさか…ここに来たドラグーン以外の聖獣は皆… やめろ、! 回すな!」

「ゴーシュート…」

リョウの静止の言葉も聞かず、はガルオンをシュートした。

『ぐわっ!』

トライピオは針を高速で竜巻のように回し、ドラグーンを攻撃する。
その攻撃を防ぐことがやっとなドラグーンは全く反撃ができない。

『ガルルルル!』

そこへ、のベイブレードから飛び出たガルオンまで向かって行く。

『くっ…!』

「ドラグーン!!」

ドラグーンは歯を食いしばる。

『うあああ!』

だが、攻撃をくらったのはドラグーンではなくトライピオだった。

『ガルオン! 何故ドラグーンを攻撃しないのだ!』

『何を言っている、トライピオ』

「白い…ライオン?」

リョウがガルオンを見ると、”黒獅子”のはずのガルオンは、薄い黄色を帯びた白い獅子になっていたのだ。

「ドラグーンの味方の私達が、”邪悪”に力を貸すなんてこと、する訳ないでしょう?」

「え、…?」

(まさかお前は…こっちの世界にいたのか…!)

トライピオに妖しく微笑んで言うのは
いつもの妹でないことにリョウは驚く。 ドラグーンは目を見開いた。
途惑っているリョウには、クス、と笑って話しかける。

「その話はまた今度。 今は目の前の敵を倒すことに集中しましょう」

「は、はい…!」

姿はだが、あまりにも別人格で、リョウは思わず敬語になってしまった。

『やめろトライピオ!! この体は聖獣同士が戦うためのものじゃないはずだ!!』

『そうだ、この体はこの世界の”聖神殿(ベイブレード)”がもたらした”聖なる力”。 ”邪悪”が与えたものではない!』

尾の攻撃を避けながら、ドラグーンとガルオンはトライピオに言い聞かせるように話す。

『だまれ! この大いなる力は、
 あのお方が神聖獣界だけでなく、この人間界をも支配するためのものなのだ!!』

「に…、人間界をも支配する? そんなバカなことが…」

「そんなことは、させないわ」

震えるリョウの手を握る

『神聖獣界には四聖獣の兄貴達がいる! 簡単には支配されないぞ!』

『四聖獣? あの弱虫どもは、あたふたとどこかへ逃げてしまったぜ!』

逃げた? 兄貴達が…? 嘘だ! 嘘だ!!
トライピオの言葉に、ドラグーンの動きが止まってしまった。

『スキあり!!』

その一瞬の隙に、トライピオは大きなハサミでドラグーンを捕らえた。

「ドラグーン、危ない!!」

『しまった!!』

『とどめだ! トライピオ刺激針(デススティンガー)!!』

尾の巨大な針が、身動きのとれないドラグーンに襲いかかる。

『ドラグーン!』

「ガルオン、彼なら大丈夫よ」

ドラグーンを助けに向かおうとするガルオンを、は止める。
ガキッ

「うわっ。」

硬い物と硬い物とがぶつかった音に、リョウは目を瞑る。
だが、トライピオとそのブレーダーの表情は悔しそうだ。
ドラグーンは、針を歯でつかみ、

『四聖獣の…オレの兄貴達皆が逃げたなど 嘘 だ! オレは騙されないぞ!』

針を噛み砕いた!

『ぎゃあっ! (バカな、オレの必殺技を口で防ぐとは!?)』

『兄貴達は弱虫なんかじゃない!』

トライピオは動揺し、一瞬の隙ができた。
その隙を逃さず、ドラグーンはトライピオのしっぽを掴む。

『しまった、しっぽを…! これでは風邪をおこせない!!』

『青龍雷刃斬(ドラグーンサンダースラッシュ)!!!』

ドラグーンは雷を全身に帯び、爪でトライピオを切り裂いた。

『うわあああ!』

トライピオは小さくなり、ベイブレードに乗って少し離れた場所に飛ばされた。

「やった! ドラグーン!!」

「ね、ガルオン」

『ああ…』

は元に戻ったようで、無邪気な笑顔をガルオンに向ける。
トライピオのブレーダーは、う…、と気を失って倒れた。

『はっ! あれ? ここは? オレは一体何を?』

急にトライピオの様子が変わり、オドオドしている。

『トライピオを操っていた、”邪悪”の支配力が抜けた!』

『いてててっ! 体中が痛いっ!』

『”邪悪”に操られていたせいだな』

『”邪悪”!! そうだ…ヤツに神聖獣界は乗っ取られたんだ。 そして…』

全身筋肉痛のように痛くなったトライピオ。 ドラグーンの”邪悪”という言葉にはっとする。

『乗っ取られて、どうなったんだ?』

ドラグーンは聞く。

『だめだ…そこで記憶がなくなっている…』

必死で思い出そうとしたトライピオだったが、全く記憶が無いらしい。

『あ。 力が…抜けていく…。 眠い…。
 しばらくオレは眠るぜ…。 用があったら起こしてくれ…』

『トライピオ!!』

トライピオの姿が段々透けて、ベイブレードの中に戻っていった。

「いいやつだったんだ、トライピオって」

『うん、聖獣に悪いやつはいない。』

止まったトライピオのベイブレードを拾って微笑むリョウ。

「う…いたた…」

「お兄さん! 大丈夫ですか?」

とリョウは、起き上がったトライピオのブレーダーの元へ駆け寄る。

「いたた…体のあちこちが痛え…。 頭がガンガンする…オレは何をしていたんだ?」

『操られていた後遺症だ。 人間まで巻き込むとは…”邪悪”め、ひどいことを…』

「大変だ! 救急車ーっ!!」



リョウが病院へ連絡すると、間もなく救急車が来、お兄さんは病院へ運ばれていった。

「よかった…3日くらい寝てれば治るって」

「大変な事にならなくてよかったね」

ほ、とリョウとは息をつく。

「”邪悪”…悪の元凶なんだね。 オレも力を貸すよ! 一緒に戦おう、ドラグーン!」

「私も戦うよ、ガルオン」

『おう!』




学校の屋上に、事の一部始終を見ていた、ミニスカートの女の子がいた。

「ドラグーン」

手には、青色のベイブレード。 聖獣は、”朱雀”。

『本当の戦いはこれから始まる。 これから…な』



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・・後書き・
まず、夢主の人格が変わりすぎ ←
小2の女の子が急にあんな口調になったら誰だって驚くでしょうね…^^;
夢主のこのことについては次の話あたりで。 すみません、謎が早くも解けてしまいます(…

2008 / 11 / 2 UP